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はじまりの朝 / 山川 雫

「はじまりの朝」イメージ画像

週初めの月曜8時30分。風見聡太の心持ちはいつも清々しい。まるで新しい朝が自分を待っているかのような感覚が薄れない内に、祖父から継いだ店に足早に入る。

仄かな懐かしい香りと薄暗さときらびやかな埃が漂った。それは時の流れによって積み重ねられた品々が宿す静寂ないつもの世界だ。聡太は一つ一つの品に手を触れ、ひんやりとしたその冷たさを感じながら、それぞれが背負っている物語を思い浮かべる。

物思いに耽ていると、入り口のドアが静かに開かれる音が響いた。聡太は我に返り「こんなに朝早く珍しいな」と思いながら、ドアの方に目を向けると、入ってきたのは美しい女性だった。その腕には一冊の古書が抱えられている。

「おはようございます、いらっしゃいませ」と聡太は丁寧に親しげに微笑みながら声をかけた。女性はつられるように微笑みながら「すみません、この本をお譲りしたいのですが」と返答した。

聡太はレジのデスクで女性から本を受け取り、その表紙に目を落とす。古めかしい書体で『はじまりの朝』と書かれている。心の奥深くで無意識に何かが鳴った。

「すみません、この本は初めて目にします。でも、表紙からしてとても良い本ですね」と聡太が言うと、女性は優しく言った。「はい、とても大切な本です。これをあなたに譲りたいのです。」

聡太は彼女の言葉の意図を履き違え「本の状態を確認させていただき、価格を確認いたしますので少々お待ちいただけますか?」と言うと、女性は先程よりも更に優しく「いいえ、売りたいのではありません。あなたにお渡ししたいのです」と言った。

瞬間、『はじまりの朝』という言葉が、聡太の頭の中に再び戻って来て、店内に初夏のひんやりとした青い風が舞ったように感じた。

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